愛の讃歌―楽園の女神 構成案第2稿 

2013・5・30

横田安正

1.黒人ダンサー群舞  

上手スポット 画家ルソーが渾身の絵筆を振るう

舞台はルソーの最高傑作「夢」の再現 

怪しげな鳥のさえずり ミツバチの羽音 動物の咆哮 たわわに実るオレンジやバナナ 咲き誇る花々 息がつまるほどの甘い香り 溢れる緑の森

南国の密林の精たちが地表から湧き出るように現れ美しく可能的な踊り

―――以上はイントロで短くてよい―――

(暗転)

2.女(ヤドヴィーガ)とルソーの出会い  

カンバスに向かっているルソー ヤドヴィーガ洗濯をしている

その美貌に見とれるルソー 思い切って近づく

バラを1輪差し出すがすげなく拒絶する女 男なおもせまるがせせら笑う女 そこへ夫ジョゼフが現れる 駆け寄る女

 

3.ヤドヴィーガとジョゼフのデュエット 

情熱的な2人の踊り ジョセフこれ見よがしの視線をルソーに送るなすすべもなく見つめるルソー

 

 

4.ルソーのソロ 

ルソー傷心のソロ

忘れようとしても女のイメージが心の奥にまとわりつく

よろよろとカンバスに向かうと絵筆をとる

 

 

5.楽園 黒人ダンサーたちとヤドヴィーガ 

森の精 鬱蒼と茂る羊歯や熱帯樹の精が精妙な音楽に乗って舞台一面に展開する

 

甘い夢のなか、ヤドヴィーガは静かに眠りに落ちる

心優しい蛇使いの奏でる笛の音を聞きながら

月は静かに光をなげかける

川(あるいは花々)、緑したたる樹々のうえに

野生の蛇たちも妙なる調べに耳を傾ける

 

ルソーのイメージと化したヤドヴィーガ引き寄せられるように踊りに加わる(衣装もルソーのイメージで)

次第に妖しい雰囲気にのめり込んで行く女

失神して崩れ落ちるヤドヴィーガを残し森の精は静かに消える

(以上はルソーのイメージ)

(暗転)

 

 

6.クライドのブルース

ルソーの苦しい胸のうちを切々と唄う

 

 

7.街頭 ルソー、ヤドヴィーガ、ピカソ、ジョゼフ

イーゼルの傍らで風船を売るルソー

洗濯をするヤドヴィーガ

3人の芸術家くずれが登場 ヤドヴィーガに言い寄る

男にもてるヤドヴィーガ、意気揚々とコミカルな踊り

 

ルソー再びカンヴァスをプレゼントしようとするが女は無視

ルソーの動きに怒った男たち、カンヴァスをルソーから奪うと手に手に放り上げながらさんざん嘲笑する

夫ジョゼフがくる 女は夫に3人の男たちを止めるように求めるが夫は手を出さずに傍観

その時屈強な画家ピカソが登場 (びっくりした芸術家くずれ口々に「ピカソ!」と叫ぶ)

堂々たる立ち居振る舞いに3人の男たちは萎縮して畏まる ピカソはカンヴァスを優しくヤドヴィーガに与える 夫ジョゼフは喜び勇んでカンヴァスを彼女の手からもぎ取り去る ルソーに歩み寄るピカソ

 

 

8.ピカソ・ルソー・ヤドヴィーガの踊り 

ピカソはルソーの唯一の理解者

ルソーとヤドヴィーガの接近を促す

しかし女はルソーよりピカソに好意を抱き情熱的な踊りを展開

心配そうに見つめるルソー

ピカソはルソーの肩をたたき去って行く

残されたヤドヴィーガとルソー

 

 

9.ヤドヴィーガとルソーのデュエット 

2人最初はおずおずと 次第に心を開き踊る

踊り終わって女は男の額にキスをして去って行く

ルソー喜び勇んでカンヴァスに向かうと渾身の力を振り絞り絵筆を振るう

 

 

10.楽園 黒人ダンサーたち 

甘い果実 原色の花々 緑したたる草木 密林の精が官能的に踊りだす

(舞台のそで ピカソがヤドヴィーガに自分の意思で踊りに加わるよう促す 迷う女、ピカソに背中を押され進み出る)

ライオン、虎、彪、猿など動物の精が躍り出る

激しい威嚇的なダンス 女巻き込まれて逃げ惑う

音声が妙なる笛の音に変わると黒人の楽人が登場  動物たちはたちまち静かになり従順に女に付き従う

 

 

11.楽人と女の踊り 

恍惚の思いで踊る2人 動物たちは人間に変わり楽人の従者として踊りに加わる  頂点に達する森の饗宴 女はルソーの内面に入ることが出来たのか?

 

(暗転)

 

 

12.クライド独唱

クライド揺れ動くヤドヴィーガの心を唄う

 

 

13.画家くずれの男たち登場 

大声をあげながら客席から登場する3人のならず者たち 酔っている

洗濯中の女を取り囲み悪さを仕掛ける 怒り狂って抵抗する女

しかし力では抗すべくもない

そのときルソーが猛烈な勢いで突進して来る 激しく争う男たち

男の1人がナイフを取り出しルソーを刺す 崩れ落ちるルソー

男たち事の重大さに気づき一斉に逃げ出す

ヤドヴィーガ、ルソーを必死に介護する 傷は致命傷ではなかった

 

 

14.長嶺ソロ 

初めてルソーの真心に触れたヤドヴィーガ

過去の無慈悲な振る舞いを悔い踊る

 

(暗転)

突然、森の音声が鳴り響きホリゾントに緑のイメージが錯綜する

 

 

15. ルソーとヤドヴィーガ

アトリエに駆け込むヤドヴィーガ

ルソーはまだ身体が充分に動かない 周りを激しく踊る女

初めて熱い口づけを交わす

(暗転)

 

 

16.紗幕

女服を脱ぎヌードになる 「夢」の女主人公のポーズをとる

 

 

17.ピカソ、芸術家たち、ルソー、ヤドヴィーガ 

ピカソ、ルソーのカンヴァスを手に登場 喜びの踊り

ルソーもやっと芸術家の仲間に入ったのだ 

他の芸術家たちを呼び込む

ルソーを迎え盛り上がる宴

ヤドヴィーガも嬉しい

宴が終わり残ったヤドヴィーガとルソー

 

 

18. ヤドヴィーガとルソー

静かに踊る2人 しかしルソーの様子がおかしい

体力が極端に弱っているのだ

死なないで 死なないで

ヤドヴィーガひしとルソーを抱き熱い口づけを交わす

そのまま崩れ落ちるルソー

ヤドヴィーガ絶望の表情

 

 

19.カスタネットソロ 

ヤドヴィーガ自らの運命にひとり絶望のカスタネットを打つ。

そして精根尽き、斃れる。

ルソーの亡霊が登場 絵筆を振るうと・・・

 

20.楽園 全員 

こつ然と現れる楽園 熱帯の鳥のさえずり ミツバチの羽音 動物の咆哮 滴る緑の植物 鬱蒼たる樹木 甘い果物の芳香 一斉に湧き上がる森の精霊(黒人ダンサーたちの見せ場)

ヤドヴィーガが吸い込まれるように入ってゆく

ピカソ、芸術家たちも加わって大大円

ヤドヴィーガは楽園の女神になった

最後、名画「夢」のヌードの女性の姿勢をとって・・・

(終わり)

 

 

 

 

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